社会戯評84
〝勝ちに不思議な勝ちあり〟
〝負けに不思議な負けなし〟
ドナルド・トランプは、所有するトランプタワーで大統領選の勝利宣言をした。支持者の湧き上がる歓声の中で、当の本人は燥ぐこともなく、実に淡々と「アメリカの分断の傷を超える」「今我々は一つの結束した国になるべきだ」「すべての国民の大統領になる。」と述べ、さも当たり前のように平然としていたのには驚いた。まさに「得意泰然」とはこのことか。▼それにしてもマスメディアの慌てふためきようは尋常ではなかった。「世紀の番狂わせ」「トランプまさかの勝利」「衝撃の結果」などと新聞の見出しが躍った。大分の地方紙も多分に漏れず情報の一方通行の雰囲気にのみ込まれていたであろうことは想像に難くない。我々もその報道に納得していたことに結果が出るまで気付かなかった。▼マスメディアの予想を覆すトランプの勝利は、マスメディアが自覚症状もなくエスタブリッシュメント(既得権層)側に位置してはいなかったか?トランプ現象の本質を理解せず、コンピュータ頼りの世論調査で都合の良い数字ばかり追いかけすぎたのではないか(自省!)▼急速に進むグローバル資本主義、一部の富裕層と中産階層の格差(没落)の増大は国民の間に閉塞感や不満が蓄積し、その現状に強い怒りを持つ人々にトランプは支持された。このことはアメリカ社会の問題点として早くから指摘されていたにもかかわらず、クリントンは政治の世界で日の当たる場所に長くいたことで、小さな声が耳に届かず、現状維持派、オバマ政権継続派、そして既存の政治家の象徴となって支持が広がらなかった。
(立井 大楠)