社会戯評・・75
強迫観念に駆られる?
最近、新聞社のルポや本、講演会等でも「下流老人」「老人地獄」と言った出版物が氾濫し、平気でそうした言葉もよく使われる。さらに、それよりも行政資料や担当者の発言にも「認知症」の有病率が高齢者の・・・といった説明が多い。こういう情報環境にいると〝強迫観念〟に駆られ精神的落ち着きを無くしてしまう。現実社会が仮にそうだとしても、もう少し静かに安心して老後が過ごせるような生活環境や対応策はないものだろうか。▼そうした戸惑いを感じていた時、三愛病院の半沢一那医学博士の講演「健康セミナー」がホルトホールで開催された。医療現場の大きな課題はやはり「認知障害」であるとの話であった。平均寿命が延び、高齢化社会となればどうしても避けて通れない問題ではある。それでも「高齢による通常の老化」と「病気が原因の認知症」の違いがあるのではなかろうか。半沢先生は、それでも認知障害は「治療に勝る予防」を強調され、「①前日の出来事を日記に付ける。②旅行などの計画は人任せにせず自分で立てる。③歩くことが記憶機能の改善につながる」(大分合同新聞)と、だれでも直ぐ普段に出来ることを話された。▼また、徘徊する認知症の高齢者も多く、事故などに遭わないようにと、市によっては社協などの協力で、徘徊者に声をかける模擬訓練を実施し、見守り体制を強めようともされている。さすがに頭が下がる。だが、一方では先の「強迫観念」から抜けきらない。これも一種の老化現象か?(立井 大楠)