社会戯評 (春日かけ橋平成22年5月号掲載)
「三」の文字?
佐伯市の佐伯城跡の近くに、
いかにも由縁のありそうな「三余館」という勤労者総合福祉センターがある。
そこの職員さんに尋ねると、主任と呼ばれた年配の女性が詳しく教えてくれた。
三余とは中国の古典「三国志」に出てくる言葉で、
読書するによいといわれる三つの時、
冬(年の余)、夜(日の余り)、雨降り(時の余り)をさしているそうだ。
そういえば、中国には「三」に因んだ言葉が多いようだ。
よく引用されるのに「三上」がある。
想を練り、文を練る、よい考えが浮ぶ場所として、
「馬上、枕上、厠上」の三つが挙げられている。
現代風に読み替えると、
さしずめ馬上は電車などの乗り物、
枕上は布団の中、厠上はそのままトイレということか。
ということを考えながら、
外山滋比古氏の「ことばの作法 心を伝える〝ひと言〟の智恵」(1996年)
という本を再読していると、
おもしろいことをふと思いつくのは「三中」にあり、という言葉に出会った。
ここで言う「三中」とは、
「散歩中、雑談中、無我夢中」の時だと言っている。
ただし「三中」だから「三上」よりも一段低いが、
なかなかいいと自讃されているところがまたいい。
いや脱帽?